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女『不動産屋さんに、聞いてたんです、次に住む人のこと』 男「な、なんだ、驚いたわ、くそ」 女『まあ詳しいことはもちろん聞いてませんけどね』 男「プライバシーというものがあるからな」 女『いいな、私も小説好きなんです』 男「へえ、そりゃあいいことだ」 女『私の知ってる作家さんだったりして』 男「ないない、超無名だから」 男「ていうか去年の今頃だと一冊しか書いてないから」 女『想像すると楽しいですよね』 女『名前、言っちゃダメですよ』 男「言っても聞こえねーだろ」
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女『じゃあ、今日はこの辺で』 男「おう」 女『あ、歳が近いってこともチラッと聞いたんで、明日から、敬語やめようと思います』 男「不動産屋の親父……口軽くねえ?」 女『なんか敬語だと、堅苦しくて……』 女『じゃあ、また明日』 男「ふぅ……やれやれ」 ガチャリ 男「あと2本か」 男「一気に聞いちまうかなあ」 【20××.3.23 20:00】 女『こんばんは』 男「はい、こんばんは」
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男「こっちはまだ夕方ですが」 女『さっきお料理失敗して、家の中が焦げくさいの』 男「なにやってんだ」 女『いやあ、油断した』 男「なに作ってたんだよ」 女『ロールキャベツって、簡単だと思ってたんだけどなあ』 男「ロールキャベツ焦がせるって、それすごくね? 才能?」 女『今日は仕事始めだったんだけど、そっちの方は、まあ無事終了!!』 男「おお、もう始まったのか」 女『優しい先輩がいてくれて、色々と教えてくれたの』 男「そりゃあ、よかった」 女『私、偏頭痛持ちで心配だったんだけど、ここのところ調子もいいみたい』
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女『一回痛くなり始めると、大変なの』 男「へえ」 男「なったことないからわからないけど、普通の頭痛よりも痛いもんなのかな」 女『あと、格好いい上司の人もいたの♪』 男「おお……ちょっと妬けるな」 【20××.3.24 19:00】 女『やっほー』 男「お、テンション高いな」 女『今日も快調ー』 女『先輩も格好いいしー』 女『マキさんも優しいしー』 男「はは、順調だね」 男「おれも明日からそうなるといいんだけど……」 女『今週の金曜日に歓迎会してくれるっていうから、楽しみ!!』
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男「おお、いいじゃん」 男「おれも酒飲みたくなってきたな……」 女『うふふ』 男「ビールでも開けるか」 プシッ ゴクゴク 男「っくぁー!! うめえ」 男「さ、続き続き」 カチャリ 女『始めてまだ少しだけど、私のことばっかり話してるね』 男「ふぅ……」 男「そりゃ、まあ、君のテープだし」
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女『あなたの話も聞きたいな』 男「あなたの話もって……」 男「聞こえるのか?」 女『聞こえるよ』 男「……」 男「え?」 女『多分』 男「……」 女『聞こえたら、いいな、ってね!!』 男「ああ、そういうことか」 男「時々シンクロして、びっくりするわ」 女『小説は、進みそう?』 男「ん、まだ取りかかってないしな」